昭和30年代の終わり頃から40年代の中頃まで、大栗川で毎週のように父と釣りをしていた。ちょうど筆者が小学生から中学生の頃のこと。喘息持ちで身体が弱かった筆者は、八王子旧市街地の自宅から自転車で秘密の釣り場まで通った。そのおかげもあって体力もつき、小学4年生くらいから欠席なしで過ごせた。
当時の野猿街道は殆ど車も通らないのどかな街道で、峠の上までえっちらおっちら何とかペダルを踏み、頂上の湧き水というこの上もない自然の恵みでのどを潤し、汗をぬぐい太田川が大栗川に合流する付近の釣り場まで自然の風を身体一杯に受けて一気に峠を下ったものである。あの時の爽快感はいまだに鮮明に記憶している。
大栗川は自然のままに蛇行する川で、周囲にあるのはせいぜい田んぼや畑、自然に満ち溢れた地域だった。ある時、川岸の茂みがかさこそ音をたてているのでじっと目をこらしていると、ラッコのような形体の生き物が泳いでいた(素人ながら今でもニホンカワウソだったと信じている)。そのような自然の中で週末は釣り三昧だった。ここには案外多種の魚が生息しており、この釣果のおかげで当時の我が家の庭には池が作られ、30センチ位の金兜もゆうゆうと泳いでいた。
あれから約40年。縁あって大妻女子大学へ奉職し、大学へ通う道がやはり野猿街道でその移り変わりを否応なく実感している。湧き水は普段は涸れ道幅も4倍以上になり、マンションや家が建ち並んでいる現実。大栗川はまっすぐに改修されている。新河川法以降、多摩川水系工事実施基本計画で治水や利水をキーワードに大栗川も国の直轄管理区間に組み込まれていき、多摩ニュータウン開発と共に河川の改修も実施された。その後の河川法改正以降の整備基本方針で河川環境の要素も加わり、整備計画が実施され柚木緑道等が整備され現在に至っているのはご存じの通りである。
大学では環境保護論、環境経済、環境法等を担当し、地域の変化も織り交ぜながら自然環境と人間社会のあり方を将来を担う学生と共に考え議論している。今、大学には多摩地域を始め様々な地域からの学生達が学んでいる。彼女達が数十年後に再びこの地を訪れた際、感じたことを言葉や声にして、次の世代に伝えてくれればと願っている。 100201号掲載
‘コラム’ カテゴリーのアーカイブ
大学と地域を結ぶ 「自然からのメッセージ」大妻女子大学社会情報学部教授 黒沼吉弘
ここで…~良質な睡眠はいい寝具から~ 「トミー初夢」店主 福島康雄さん
「一富士、二鷹、三茄子」縁起の良い初夢とされているが、読者の皆様の初夢はどんなだろう?
桜ケ丘南口商店街にある寝具店『トミー初夢』のウインドーには“寝るが一番”と大書されている。疲労回復、健康の源はやはり睡眠、人生の3分の1は寝ているのだが、私たちはどのくらいふとんに関心を払っているだろうか。
「良いふとんとは寝床環境が湿度50%、温度33℃を保持し衛生的であること」と店主の福島康雄さん。大学卒業後、下着メーカーの大手「ワコール」勤務を経てお父さんが経営していた『トミー初夢』を継ぐ。大企業から個人商店への転身、やるからには生き残りを賭けて“睡眠のプロ”であることを自身に課す。「日本睡眠学会」に入り睡眠生理学、人間工学を学び、個人商店が百貨店や大型SC、通販と対抗していく為の差別化に積極的に取り組んできた。オーダーメイドの和布団、綿の打ち直し・仕立て直し、洗剤を使わず、天然水で洗浄する羽毛布団のリフォーム等により、年間1000枚ものふとんがゴミになるのを阻止、提供する商品も福島さんが納得したものしか仕入れない。素材と寝心地にこだわり、個人のライフスタイルや住環境、体質、感性の違いに心を配り、市内トップクラスの品揃でふとん選びをサポートしている。
また福島さんが宝物と言い、戦力とするものが30年・3200件に及ぶ「顧客カルテ」。より良いふとんを届けるためには履歴がわかること。顧客のライフスタイルやニーズの変化に対応出来るよう、地区別にファイリングされている。プロとして地域の人たちの期待以上の「もの」や「サービス」を提供し「私の街にはこんなお店がある」と自慢してもらえることが集客につながり商店街の活性化にもなる、と商店街のイベントや毎月の清掃デーにも積極的に係わる。街づくり・商店街の活性化にも一家言を持つ。商店街や街区はその街の顔であり、その街の経済と文化レベルのバロメーター。商業活動と街づくりが“住みよく豊かな地域社会づくり”の重要な柱。地域商業とは地域の養分を吸収しそのポテンシャルを基盤に咲く精華である、その華のうるおいがまた地域に寄与していくのだ、と。
今、全国的に個人商店の苦戦が伝えられる中、専門店が自分の専門についてキチンと勉強し自信を持って商品を提供していくことが生き残りの基本だと教えられた。 100101号掲載
大学と地域を結ぶ 大学を市民も集う「学び舎」に 大妻女子大学社会情報学部教授 生田 茂
コミュニティを紡ぐ
今から10年ほど前、多摩地域のコミュニティを紡ごうと「多摩・未来」を作って活動しました。この「多摩・未来」の活動を通して、人と人とを繋ぐ沢山のネットワークができ、多摩は人材の宝庫であることを実感したものでした。
「多摩・未来」の中から、子どもたちの学びを支援する「多摩まなび」、子どもたちと一緒にまだ見ぬ多摩を訪ね歩こうと「多摩モノレールが繋ぐこの街探検隊」、三宅島のみなさんの支援の組織「三宅島と多摩を宅むすぶ会」などが生まれました。
三宅島の支援活動には、大学の教員や小学校の先生に加えて、都立大学や大妻女子大学などの学生が大勢参加をしてくれました。南大沢保健福祉センターや柏木小学校の家庭科室に集まり、地域に散っていったものでした。
学生が地域の皆さんにお世話になりながら
大妻女子大学に異動してきて2年目、今年始めて卒業研究の学生を受け持っています。「見知らぬ人にお世話になる大切さを味わって欲しい」と学生には学校ボランティアなどを勧めています。
現在、5名の学生が毎週1・2回八王子市と多摩市の3つの小学校に出かけています。
机に座っていることが難しい児童、学習に追いつけずに困り感を持っている児童の支援に関わりながら、そして、先生の働く姿を見つめながら多くのことを学ばせていただいています。
大学を市民との協働の学び舎に
学生が地域の学校やみなさんにお世話になるだけでなく、市民のみなさんが大学に集い、学生や教員とともに「地域を学び、多摩を学び、社会を学びながら、共生する」、そんな紡ぎ合いを目指す大学づくりが、いま大切に感じています。
今年から本学の環境情報学専攻でスタートした「中高の理科の教員免許状の取得」を目指す学生がその中心となって活躍してくれる日を夢見ながら、みなさんとの輪(和)を広げさせていただければと願っています。 091201号掲載」
旬を愉しむ 12月の野菜「トマト」 シニアベジタブル&フルーツマイスター武田由季
最近では黄色に緑、黒などいろいろ並ぶようになったトマトですが、赤いトマトは食卓やお弁当を美味しく見せてくれますね。南米生まれの野菜ですが、日本に入ってきた江戸時代には、あまりに色鮮やかで美しいことから毒でも入っているのではと専ら観賞用だったそうです。明治時代になり洋食が広がる中で食べられるようになり、今では野菜の代表格と言えますね。
免疫力アップが期待できるカロテンや、体をサビから守るリコピンを豊富に含むほか、様々なビタミンなどが含まれていますが、無理なく沢山の量を食べやすいことも大きな魅力の一つです。醤油や味噌と同じ旨み成分のグルタミン酸を含むことから、イタリアでは“おふくろの味“の鍵にもなっています。
切ったトマトをフライパンで軽く焼き、あればバルサミコ酢をかけて酢を飛ばしてから醤油と黒コショウで調味するとおもてなしの一皿になります。
葉が青々としてピンと張っているものが良品ですが、表示のあるお店も増えてきましたので可能であれば品種名(種類)に注目して選んで召し上がって下さい。今日は桃太郎にしようか?それともキャロルセブン?アイコもあるなと考えるとトマトが何倍も面白くなります(「トマトがトマトでなくなる」と言っています)。よく見るとお近くのスーパーなどでも複数の品種を扱っていると思いますので是非トマトを、野菜を楽しんで召し上がって下さいね。
今回で最終回です。今までありがとうございました。 091201号掲載
大学と地域を結ぶ 大妻女子大学社会情報学部 教授 松本 暢子

大妻女子大学社会情報学部 教授 松本 暢子
昨年7月、諏訪商店街の七夕フェスタに「手づくりワッフル」の店を松本ゼミとして出店しました。前年に復活したこの七夕フェスタは、商店街と法政大学の保井ゼミ等との協力によるものでしたが、この活動をさらに広げ、継続するために、私たちも地元の大学として関わったわけです。
当日は、甘い香りに誘われて多くの方に立ち寄っていただき、様々な住民の方と言葉を交わすことができました。参加した学生たちの多くは、こうした経験が初めてで、不手際が多々ありヒヤヒヤものでしたが、若者のアイデアやエネルギーが期待されていることを各々が感じてくれたのではないかと思っています。
そして3月には、ゼミでの一年間の取り組みについて、諏訪商店街にある「すくらんぶる~む(NPOまちづくり専門家会議・事務所)」で報告会をしようと声をかけ、彼女たちなりに考えた「諏訪商店街」の空き店舗利用のアイデアと模型を発表しました。内容は現実的ではなかったものの、地域づくりを考えるきっかけになったようです。
4年となった学生たちは卒業研究として、諏訪・永山地域で子どもの遊び場の調査、住民として調布のまちづくりの研究等を始めています。自分の住んでいる地域について自ら考え、その環境を評価し、よりよいものとしていくことが「地域づくり、まちづくり」の本来の姿です。現在、多摩NTでは多くの住民が積極的に取り組んでいますが、学生にはその実態が十分に見えていないし、重要性が実感を伴ったものとして理解できていないようです。
だからこそ、七夕フェスタに出店して、住民の方々から褒められたり叱られたりしながら「経験することが原点になる」と楽しみにしています。
今年は、七夕フェスタだけでなく、「手づくりワッフル」の店を春のオーガニック市にも出店しました。このほか、諏訪地域で活動する学生のネットワークに参加し、諏訪小学校や瓜生小学校での放課後子ども教室等への関わりができつつあります。
こうした活動を通し、学生自身がそこでいかに学び考える糧とするか。大学の地域貢献の真価が問われていると思うこの頃です。091101号掲載
旬を愉しむ 11月の果物「西洋梨」 シニア ベジタブル フルーツマイスター 武田由季

西洋梨は召し上がりますか?タルトなどのお菓子では御馴染みかもしれませんが、スーパーなどに出回る品種(種類)の数も比較的多く選ぶ楽しさが増しましたので、果物としても是非お楽しみくださいね。9月には日本梨を取り上げましたが、同じ梨でもかなり趣が違います。西洋梨が本格的に入ってきたのは明治時代、西洋種のリンゴと同じ頃ですが、リンゴがみるみる全国に広がり定着する一方で、西洋梨はなかなか振るいませんでした。食べ方やその美味しさが知られていないことが一番の原因だろうと、近年関係者が特に熱心に普及活動に取り組んでいます。それでは皆様には美味しく食べる方法を!それは西洋梨からの食べ頃のメッセージである「香り」に気付くだけのこと。果物には買ってすぐに食べたいサクランボなどのほかに、室温において食べ頃を待って食べる(追熟といいます)バナナやアボカドなどがありますが、西洋梨も追熟させて美味しくなります。殆どの果物は食べ頃になると甘く芳しい香りで「そろそろ食べてね」とサインを送ってくれますからどうか気付いてあげてください。とろりと滑らかで瑞々しい西洋梨に出会えるはず。食卓に飾れば流れるような独特の形の美しさを楽しみながらサインに気付くこともできて素敵です。天然の芳香剤のようでもあります。生食のほか、軽く潰してバターと塩・白コショウで調味して肉類のソースや、熟し過ぎたものはビーフシチューの隠し味にどうぞ。
091101号掲載
大学と地域を結ぶ 大妻女子大学社会情報学部専任講師 谷口 新 「あそばれない遊び場」が教えてくれること
子どもがよくあそぶ空間とはどのようなものか?‘公園’や住棟の間にある‘プレイロット’と呼ばれる遊び場を調査研究してきました。多摩ニュータウンの諏訪~南大沢までの地域の方々に情報をお聞きしながら、最終的に数百箇所を見てまわりました。
私の専門は建築計画学。空間の使われ方を調査し、計画・設計の拠り所となる知見を導く研究をしています(‘2DK’という間取り誕生の背景にはこの分野の先達の方々がいます)。
さて、遊び場の話に戻します。まずは現状把握。一番過ごしやすい季節に延べ150人の大学生と共に、遊び場大調査を実施しました。かれこれ10年前のことです。その結果、利用がない遊び場、即ち「あそばれない遊び場」が調査した中の半分近くも存在することが明らかになりました。
この「あそばれない遊び場」の特徴は何か。詳細は省きますが、遊具の数が2以下、地面の仕上げが単一材料ではない、入口が少ない、そして面積がある大きさ以下、などです。
また、忘れてはいけないのは屋外であること。継続して年間の利用を調べると、‘夏向き’‘冬向き’の遊び場があることがわかってきました。子どもが活動する時間帯に夏は日影、冬は日当たりがあると利用されやすい。従って「あそばれない遊び場」はその条件が逆なわけです。住棟や樹木の配置や量などが遊び場への日影・日当たりに影響します。気候等の環境的な視点を加えることの重要性に改めて気付かされました。
魅力的な遊び場での体験は良き思い出として大人になった時まで残ります。成長し、よそへ越していったかつての子ども達が次世代を育成する場として地域に戻れば、少子高齢化で元気をなくしたまちの活性化に繋がるかもしれません。その意味でも隠れた地域資源である「あそばれない遊び場」を再考・再生する意義は少なくないと思います。
まちづくりにはソフトとハード両面のバランスが大事なことは言うまでもありません。しかし、残念ながらハード面にかかわる地域資源の基本情報が充実していないように感じます。
この夏から、大学では10年間の遊び場の変化をみる調査を学生たちと少しずつ始めたところです。 091001号掲載
旬を愉しむ 10月の果物「バナナ」 シニア ベジタブル&フルーツマイスター 武田由季
文献上、日本に最初にバナナが登場したのは織田信長へのポルトガル人宣教師からの贈り物とされていますが、今も広く愛されている果物ですね。世界中から輸入していつでも食べることができるので日本人にとっては旬のない果物と言えそうですが、10月のテーマに選んだことにはちゃんと理
由が。一番多く食べられるのは他の果物があまり出ていない5月ですが、2番目が10月なのです。
果物にしては水分が少なく(それでも75%)モソモソしていることから暑くも寒くもないこの時期に食べたくなるのかもしれませんね。バナナは複数の糖分を含むことから食べてすぐ空腹感が満たされ、しかもそれが持続するのでスポーツの秋にピッタリ。忙しい朝の食事代わりの他、残業時や塾のおやつにも簡単に食べられて果汁で汚れる心配もなく、甘い香りでリラックスできる「残業バナナ」はオススメです。お店で見かける殆どの品種(種類)はジャイアントキャベンディッシュですが、赤紫色の皮のモラードはサッパリした甘さで生食のほか豚肉とソテーしても。緑色のツンドクやカルダバは調理用で茹でたり焼いたり、簡単なところでは皮を剥いてラップに包み電子レンジで加熱するとジャガイモの様な感じになります。大きめのスーパー等で手頃な値段で時々見かけるようになりましたから挑戦してみてくださいね。日本にも沖縄にねっとりクリーミーで上品な味わいの島バナナがあります。機会があれば是非。 091001号掲載
東京ヴェルディだより

聖ヶ丘小を訪れた5選手
Jリーグも終盤戦にさしかかり、週末に試合も控えた9月10日(木)のトレーニング後、土屋征夫選手ら10選手が2グループに分かれて多摩市内の小学校2校を訪れました。
ヴェルディのホームタウンは東京都全域ですが、中でもヴェルディに出資をして頂いている稲城市、多摩市、日野市、立川市の4市はホームタウン中のホームタウン。チームの調子が良い時はもちろん、チーム状況が苦しい時でも変わらず応援してくれるのはやはり地元の皆さん。その地元の子供たちと触れ合って、ヴェルディをもっともっと身近に感じてもらうため、選手達もこのような活動への協力を惜しみません。
この日も華麗なリフティングや強烈なシュートなどを披露してプロの凄さを体感してもらった後は、選手と子供たちがチームを組んでミニゲーム。約1時間と短いながらも非常に有意義な時間となりました。
多摩市を始めホームタウンの皆さん、ぜひ地元のチームである東京ヴェルディへのご声援をよろしくお願い致します。
☆10月のホームゲーム 一般 1500円~ 小学生 300円~
4日(日)…ヴァンフォーレ甲府戦(19時半国立競技場)
18日(日)…水戸ホーリーホック戦(16時味スタ)
25日(日)…アビスパ福岡戦(15時味スタ)
詳しくは東京ヴェルディ・オフィシャルサイト(www.verdy.co.jp)にて
東京ヴェルディ 広報 谷 俊一郎 091001号掲載
大学と地域を結ぶ 「多摩丘陵の自然を観察する」 大妻女子大学社会情報学部助教 大曽根陽子
今春、大妻女子大学に着任し、都内から唐木田にあるキャンパスへ電車通勤するようになりました。着任当初は、慣れない仕事と長時間の通勤に疲れ、電車の中で本を開く気にもなれずにぼんやりと外を眺めていることがよくありました。
そんな時、面白いことに気付きました。多摩川を超えると、あたりの景色が独特のものになるのです。ゆるやかに波打つ土地、ところどころ丸く切り残された雑木林、丘の急斜面には緑地が残り、ゆるい斜面には傾斜を利用していかにも見晴らしの良さそうな住宅が建っています。いわゆる多摩丘陵の景観です。長く住んでいる方には見慣れたものかもしれませんが、初めて見る私の目には、この住宅地と緑地が作る立体モザイクはとても新鮮に映りました。ゴールデンウィークが近づく頃には一帯が新緑で淡い緑に煙り、それは美しい眺めでした。
私が担当している生態観察実習では、この多摩丘陵に生息する動植物の生態を観察します。実際に歩いてみると、電車から眺めていたのとはまた違うことに気付きます。保全管理が行き届いている大規模な緑地や公園では、キンランやギンラン、ナルコユリ、ツリフネソウ、ギンリョウソウなど都心ではほとんど見られなくなった植物が生息しています。また、そのようなところではタヌキの「ため糞場」も見つかりました。「ため糞場」というのは複数のタヌキが排便に来る、いわば公衆トイレのような場所で、これが見つかるということはその地域にはある程度の数のタヌキが生息していることを意味しています。一方、残念ながら多摩地域は造成地も多く、成長の早いクズやイタドリ、外来種のセイタカアワダチソウやブタクサなどが繁茂し単調な植生が成立しています。また、あちらこちらに残されている雑木林も、よく見ると、モウソウチクが侵入していたり林床にササが繁茂していたり、と荒れた状態になっているところが少なからずあります。
都心では見られない動植物が生息する一方で、明らかな開発の影響も見られる多摩地域は環境教育や生態学の研究をするうえで非常に面白いフィールドです。これからこの地域をフィールドとしてどんな教育・研究をしようかと今あれこれ考えているところです。 090901号掲載
旬を愉しむ 9月の果物「梨」 シニアベジタブル&フルーツマイスター武田由季
梨はお好きですか?と聞くと、多くの方が連想されるのは「日本梨」だと思います。ほかにも西洋梨や中国梨がありますが、今月は日本梨についてです。
梨はバラ科の果物で、りんごやさくらんぼの仲間ですが、日本梨については「日本書紀」に既に記載があり、登呂遺跡からも炭化した梨の種が発見さています。一般的に糖度の高さは、高い順に洋梨、中国梨、日本梨 と言われていますが、日本梨には糖度以外にも魅力が沢山。その一つである独特の歯ざわりは石細胞(せきさいぼう)によりザクザクと砂の様な感じであることからサンドペアー(砂梨)とも言われています。ザックリしてこそ食べ応えを感じますね。ちなみに西洋梨はとろける様に滑らかなことからバターペアーとも呼ばれます。
青果物は、出始めを早生(わせ)、次に中生(なかて)、終わりの頃を晩生(おくて)と呼び、いつ頃のものかを分けていますが、梨はそれぞれの品種が特に充実した果物です。8月のお盆頃から早生の幸水が出始め、9月頃に中生の豊水、10月以降に晩生の新高(にいたか)へと移りますが、これらは全て日持ちがよいとされる赤梨で、今出ている殆どの品種のルーツである二十世紀は青梨です。いろいろ食べ比べてみるのも楽しいですね。
ちょっと豪華に生ハムと一緒に黒コショウを効かせた醤油ベースのドレッシングでいただくサラダもオススメです。大きめに切って歯応えとジューシーさを楽しみます。 090901号掲載
大学と地域を結ぶ「ケナフと環境教育」 大妻女子大学社会情報学部教授 北原節子
5、6年程前、中央高速から河口湖に向かう道の家の庭に直径10数センチの薄クリーム色の花びらで、中心が暗赤色した花が目に飛び込んできました。その時は花の名前もわからず、背が高くアオイに似ているようだけど何の花かしらと思いながらそのままにしていました。その後、ネットワーク多摩から2005年の体験型環境教育プロジェクトに協力の依頼があり、その機会にNPOケナフ開発機構理事長の釜野先生を紹介されました。そこで、気になっていた花はケナフの花であることがわかったのですが、この花にはすごい能力があることを知りました。
ケナフはアオイ科フヨウ属の一年草で、春にまいたタネは2、3日で発芽しグングン成長して秋には3~5mに達します。そして秋口に魅力的な花を咲かせます。このケナフの能力について釜野先生は著書の中で次の6つを挙げています。
①優秀な非木材資源である
②二酸化炭素の吸収率が良いので温暖化防止に役立つ
③二酸化窒素も吸収するので排気ガスの浄化を助ける
④チッソやリンの吸収がよいので水質浄化と土壌改良に役立つ
⑤新しい紙資源として、途上国の産業振興に寄与できる
⑥学校などでの環境教育の素材として適当である
このケナフから昨年の冬に訪れたエジプトで見たパピルスを思い出しました。古代エジプト時代から紙として使われたパピルスも窒素の吸収率がよく水質浄化に役立つ草として知られ、日本では観葉植物として鉢植えにして育てている人もいます。花についてはカヤツリグサの仲間ですからケナフとは違ってとても地味な花です。
非木材資源であるケナフが木材パルプの代わりに今よりももっと多く利用されるようになれば、地球を覆う森林の減少をくい止めることができ、森の木とケナフの働きによって二酸化炭素の増加を抑えることができると私は期待しています。
来る8月4日に多摩市総合福祉センターで地域の小学生と私のゼミ生たちが育てたケナフを使って、パルプづくりと紙漉きを体験し、ハガキをつくろうというイベントを行います。飛び入りの参加も歓迎です。 090801号掲載
