「橋本の方からも買いに来る人がいてね。この辺はちょっと不便で、南大沢駅から出ているバスも本数はそんなにないのだけど」。手土産に、と地元の人が買って持って行った先で「美味しい!」とリピートで買いに来る人がいる。バスを待たず歩く人もいる。
そんな忘れられない味が生まれる田村豆腐店を訪ねた。野猿街道の旧道にある店は、田村馨(かおる)さん、スミエさん、ご長男の家族経営だ。「ここに来た32年前は、周りは田んぼ、裏は竹林だけだった」というだけあって、今も静かな住宅街だ。正直ちょっと見つけにくい。
大豆は全て佐賀県産の「ふくゆたか」を使用、水は70m掘った地下水をくみ上げている。防腐剤は使わない。「暖かいところで作る大豆は甘みが多いんですよ」。寄せ豆腐は水にさらさず、にがりで寄せるだけ。「何も足さずに食べてみて」と言われるまま口に入れると、弾力がありながらもふわりと溶け、香りと甘みが豊かに広がる。
卸し先は市内の給食センターだ。価格競争や給食費未払いなど取り巻く状況が厳しい中、美味しいものを食べさせてあげたいと願う栄養士さんと連携し、地元の味を届けている。もちろん豆腐だけでなく油揚げ、豆乳、おから等々。お孫さんも豆腐が大好き。「僕は木綿がいいなあ」と家庭の味に大満足だ。
馨さんはもともとサラリーマン。脱サラして、当時多摩市にあった豆腐店に弟子入りし、昭和53年に現在の場所に店を構えた。早朝4時起きで、日曜日以外、毎日豆腐を作る。「だって新しいものを食べてもらいたいでしょ」。
これからの時季、食欲が落ちるが、冷たいものが食べたくなったらタンパク質たっぷりの豆腐はいかがだろうか?冷奴も良いが、温めるなら最初に片栗粉を一つまみ入れるのが秘訣と伺った。煮込んでもスが入らないのだそうだ。
◇住所 八王子市上柚木282・6(多摩センター方面からの場合「上柚木会館入り口」の信号右折) ℡042(676)7339◇日祝日休み18時半迄営業 ※来店の際は保冷バッグ等の持参をお勧めします。 100701号掲載
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