多摩市一ノ宮の小野神社参道沿いにある和菓子店『風林堂』。店主の平島啓一さんの一日は朝5時の仕込みから始まる。ボイラーに点火し小豆を煮て、その隣では米を蒸す。大量の注文が入ったときには午前3時の開始となる。開店に合わせて、だんご、大福、酒饅頭などが作られていく。
店の創業は昭和44年、多摩ニュータウンの歴史と重なる。店名は平島さんの出身地である山梨県の武将武田信玄の軍旗「風林火山」に由来する。勇ましい由来に反して、「ふうりん」という響きはやさしく、店主の人柄はたいへん穏やかだ。
平島さんは和菓子の老舗『榮太楼』で菓子職人として働いた後に独立、京王線沿線の複数の候補地から現在の場所を選んだ。開店当時から街はずいぶん様変わりしたが、お得意様との付き合いは長い。京王百貨店聖蹟桜ヶ丘店にも店で製造した和菓子を置いている。
数年前、商工会議所との共同で多摩市の特産品として最中『春蘭の府』が誕生した。皮は新潟にある最中の皮専門店から取り寄せ、小豆は丹波の大納言を用いた。試食を重ね、企画から完成まで3年を要した逸品だ。餡はほどよい甘さで上品な風味、皮は香ばしく歯ざわりがいい。
平島さんは和菓子の素材にとてもこだわる。和菓子すべてに白ザラメを使い、餅は石臼でどうづきして作る。お店の背後にある作業場は決して広くはない。だが掃除が行き届き、道具は磨かれ40年を経た今でも現役続行中だ。
かつての職人仲間から情報収集し、夫婦揃って都心のデパートへ市場調査に出掛ける。店主の和菓子への探求は尽きない。奥様は力強くサポートし、二人三脚で心を込めて和菓子を作る。これからの季節は柏餅、草餅、草大福が店に並ぶ。夏のくず桜や水羊羹などの登場もたのしみである。℡042-374-1735 100501号掲載
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