小田急・唐木田駅の改札口を出ると、向こうの正面に多摩清掃工場の高く白い煙突。右手の丘の上には大妻女子大学。左側の目前は大型のホームセンター。この建物に隠れて左手の奥約4百メートルに「多摩市総合福祉センター」がある。 地上7階建ての同センターは、住所こそ道路一本を隔てて多摩市南野だが、唐木田エリアで語っても良い施設と言えるだろう。
その外観は周囲に例を見ない。下層部分は地面と繋がる重厚な煉瓦の構築、上層部は淡色の煉瓦を思わせるタイル張りの建築。設計した類設計室からは「多摩丘陵の大地を踏まえて時を経ても動じない建物」として歴史を刻む古城を彷彿させる理念が窺われた。
建設費は土地・建物を併せて74億3千2百万円。バブル崩壊の尾を引く不況時の公共事業だった。所有は多摩市、運営は多摩市福祉協議会に委託された。
朝。市内をくまなく回るセンターの送迎バスや多摩市ミニバスで多くの高齢者が訪れる。ここは「老人福祉・障害者福祉・介護のデイサービス」の事業が行われている。自力でバス利用の人々は老人福祉の社交ダンス、書道、陶芸、体操クラブ、絵手紙などの同好会に参加したり、隣りの清掃工場からの温水で午前9時30分に開く無料の入浴を楽しむケースが多いという。平日にはフロア続きに隣接する温水プールに登録して泳ぐ高齢者も数多い。またプールのトレーニングルームには公共施設では珍しい酸素カプセルがある。50分千円の格安料金で美容と健康によいと女性に好評だ。
センターには市村則夫館長と施設管理の人々、福祉と介護に各分野の専門家や有資格者などの人々が勤務している。平成20年度の年間利用者は約13万4千人、維持費はプールを併せ約5億3千万円、利用者からの収入は約1億5千万円だった。税金は使い方だ。年少者の居場所はよく問題視されるが今後も増える高齢者の居場所は大きな課題だ。身障者や介護への対応は当然だが、ここは高齢者が外出したくなる動機を探り様々な内容のオアシスを作ってきた。設備は簡素でも清潔で安っぽくない。食堂もあるが手作り弁当と簡単な茶菓を持参すればお金は殆どいらない。やはり高齢者の声は好評だった。
ただ平成9年4月の開館から風雪に耐える外壁は年数を重ねて黒い汚れが目立ち始めた。お色直しの洗顔を行うのだろうか。 100301号掲載
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