ベビーベッドなど普通にはない時代のこと。つるしたカゴに寝せる素朴な「揺籃(ゆりかご)」は赤ちゃんの安息の場所だった。赤ちゃんは母親や祖母の歌う子守唄で安らかな眠りに誘われた。
大正 7年(1918年)、作家鈴木三重吉は児童雑誌「赤い鳥」を創刊して児童文学を推進した。この雑誌の同人で中心作家の北原白秋は「ゆりかごの唄」を書いた。ドイツのモーツァルトやイギリスのマザーグースの子守唄と日本の童歌を比較し生まれた作品と見られる。初めは白秋も三重吉もメロディをつけて歌になるとは考えていなかった。しかし同じ雑誌で童謡の創作運動を進めていた作曲家の草川信は白秋の表現に着目してメロディを書いたという。
大正10年(1921年)8月、「ゆりかごの唄」は雑誌「小学女生」に発表された。
カゴの中でコロコロと鳴くカナリヤの声、緑濃いビワの木の葉、いたずらネズミ、夢を誘うお月様。いずれも赤ちゃんの安らかな眠りを誘う。この唄は自然の中に優しさを見出だす大人が聞いても安らげる名曲。それを表現できたのは作詞者の心が優しさであふれていたからだろう。
子守唄は赤ちゃんが生まれて初めて触れる唄。心落ち着ける安定剤のようなもの。いつの世もお母さんは温かい眼差しで我が子に唄ってあげてほしいものだ。そして子供も優しい心の人に育ってほしい。 100301号掲載
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