学園の詩(41) きずな深める卒業制作

 何十年もたって母校を訪れる機会に恵まれた時、年季の入った自分の卒業作品にそっと手をふれ、無垢だった自分を思い出す。また、手で直接触れずとも、あの場所に自分の足跡があるということで、人の心の温かさに包まれていた当時の記憶が甦り、ほのぼのとした心地よさに浸る。それが卒業制作の良さなのかもしれない。
多摩市立大松台小学校(校長篠田正春)は唐木田駅から歩いて数分の丘の上に建っている。時計台が学校のシンボルだ。
その時計台の上で、創立以来21年間子供たちを見守ってきた風見鶏は現在老朽化のため修理中だが、千八百人以上の卒業生を今まで送り出してきた。親も子も卒業生という状況も増えてきている。
毎日通った学校、あの教室、そこに行けばいつでも会えた同級生や先生方。それが卒業後はもう元に戻らない。義務教育期間中の一区切りである小学校の卒業は、システムの中では時を刻むと同時にやってくる当たり前の通過地点だが、子供にとってそのようなことを認識する初めての時なのかもしれない。
他校同様にこの学校でも毎年卒業生が作品を残していく。昨年度はトイレに絵を描いた。学校のシンボルの時計台と風見鶏はもちろん、空を飛ぶ飛行機、海の中の動物たち、鮮やかな色で思い思いに描かれている。作品の前を丁度通りかかった男子児童が「新聞に載るの?」とうれしそうにポーズをとってくれた。今年度の卒業生は野外ベンチをペンキで塗るそうだ。
育った学校に何かを残し、一緒に遊んだ下級生の子達が、それと共にすごし続けていくことを願う。人と人との絆が薄くなってきているといわれている昨今、直接のふれあいはなくても、これも心に暖かい陽があたる小さな仕掛けになるに違いない。
少子化により学校の統合問題で揺れる地域も少なくないが、いつまでもこの学校が現在のまま残り、卒業生が、「ここにもどって自分も子育てをしたい」と思えるような学校にしたいと6代目の篠田校長は語る。
卒業式には風見鶏も修理が終わって戻り、89名の卒業生を送る予定だ。 100301号掲載

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