今春、大妻女子大学に着任し、都内から唐木田にあるキャンパスへ電車通勤するようになりました。着任当初は、慣れない仕事と長時間の通勤に疲れ、電車の中で本を開く気にもなれずにぼんやりと外を眺めていることがよくありました。
そんな時、面白いことに気付きました。多摩川を超えると、あたりの景色が独特のものになるのです。ゆるやかに波打つ土地、ところどころ丸く切り残された雑木林、丘の急斜面には緑地が残り、ゆるい斜面には傾斜を利用していかにも見晴らしの良さそうな住宅が建っています。いわゆる多摩丘陵の景観です。長く住んでいる方には見慣れたものかもしれませんが、初めて見る私の目には、この住宅地と緑地が作る立体モザイクはとても新鮮に映りました。ゴールデンウィークが近づく頃には一帯が新緑で淡い緑に煙り、それは美しい眺めでした。
私が担当している生態観察実習では、この多摩丘陵に生息する動植物の生態を観察します。実際に歩いてみると、電車から眺めていたのとはまた違うことに気付きます。保全管理が行き届いている大規模な緑地や公園では、キンランやギンラン、ナルコユリ、ツリフネソウ、ギンリョウソウなど都心ではほとんど見られなくなった植物が生息しています。また、そのようなところではタヌキの「ため糞場」も見つかりました。「ため糞場」というのは複数のタヌキが排便に来る、いわば公衆トイレのような場所で、これが見つかるということはその地域にはある程度の数のタヌキが生息していることを意味しています。一方、残念ながら多摩地域は造成地も多く、成長の早いクズやイタドリ、外来種のセイタカアワダチソウやブタクサなどが繁茂し単調な植生が成立しています。また、あちらこちらに残されている雑木林も、よく見ると、モウソウチクが侵入していたり林床にササが繁茂していたり、と荒れた状態になっているところが少なからずあります。
都心では見られない動植物が生息する一方で、明らかな開発の影響も見られる多摩地域は環境教育や生態学の研究をするうえで非常に面白いフィールドです。これからこの地域をフィールドとしてどんな教育・研究をしようかと今あれこれ考えているところです。 090901号掲載
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