この歌は明治42年に発表され、以来およそ百年もの間歌い継がれてきた。
シューベルトの歌曲「冬の旅」第5曲。作詞はドイツの詩人ミュラーで、その原詩を損なわずに表現したとして近藤朔風の訳詞が定着した。彼は「ローレライ」「野なかの薔薇」「シューベルトの子守歌」などの名訳で知られる。
失恋した若者の、甘く切ない思い出、社会からの疎外感、死の誘惑、ざわめく胸の内、といった難解で普遍的な人の心の中の“原風景”を表現している。
この詩に登場する「菩提樹(リンデンバウム)」は、シナノキ科の落葉高木で30メートルにもなるという。ドイツでは日本の桜のような存在で、街路樹や記念樹として親しまれている木。葉はハート形で、初夏に小さいが甘く香る花を咲かせる。
ちなみに「菩提樹(リンデンバウム)」は “愛と煩悩の象徴の木”だが、釈迦がその木の下で悟りを開いたというクワ科の「菩提樹(インドボダイジュ)」は、いわば“仏教の解脱の象徴の木”。全くの別ものだ。
どちらにしても今の時代、大木(菩提樹)の傍らで物想いに浸る若者が果たしているかどうかは不明だ。 090701号掲載
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