脚下照顧

 新緑がまぶしいこの季節になると、新人研修を終えて配属された20数年前を思い出す◆先輩たちは流れるような働きぶりだった。朝早く出社し、全員の机と電話機を拭いたり、吸殻が積もった灰皿を集め回って洗い、水滴が残らないように気遣っていた。部内約30人分の湯飲みやコーヒーカップは色とりどりで、入れるお茶やコーヒーの好みまで、とても覚えられない気がした◆「どちらさまですか」と、マニュアル通りに電話口で聞くと「君こそ誰だ、さっさと代われ」と怒鳴られたり、凡例を「ボンレイ」と得意気に読む失敗の日々。叱られたり、教えてもらってばかりで自己嫌悪の塊だったが、振り返ってみれば、気長に育ててくれたことが有り難い◆平成生まれの社会人もいる今では、お茶くみや灰皿洗いは過去の話だろう。総務省の発表によると、戦後生まれが総人口の4分の3を超えた。明治生まれが全体の0.2%、大正生まれが4.4%、昭和生まれが77.4%、そして平成生まれは18%という比率だそうだ◆若い世代が追い上げてくる。難しいことを聞かれたらどうしよう。何かひとつでも教えることができるのか。身のすくむ思いだが、幸運なことに今ならまだ、上の世代に知恵を請える◆関東大震災や戦争当時の話を聞けば、悩みも吹き飛び、なんて恵まれた時代に子育てができているのか、と元気も湧いてくる。時には最新ニュースのスイッチを切り、示唆に富んだ話に耳を傾けたい◆隔月でこの欄を担当することになりました。よろしくお願い申し上げます。小鳥田晶子 090501号掲載

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