乞田川 多摩を潤した川⑦ 矢口 優

中沢池

 多摩ニュータウンは坂が多い。徒歩や自転車で移動するには、ちょっとした覚悟が必要である。この辺りは、開発の際ブルドーザーで均されたとはいえ、もともと尾根と谷戸が交互に現れる、起伏に富んだ場所なのだ。
 乞田川には、南側の谷戸から幾つもの川が流れ込んでいた。それらの川は、両岸の田んぼと集落を潤してくれた。けれども開発で山が削られ土がコンクリートに変わると、地面は水を抱えなくなり、水量は激減した。
 乞田川沿いを歩くと、合流する水路が多いことに気づく。谷戸の名残りだ。吉祥院の辺り、八幡神社の辺り、鎌倉街道の辺り、永山駅前を下った辺り、馬引沢の辺り、大谷戸公園の辺り…。そう、今は通りになっているところが谷戸の流れていたところなのだ。鎌倉街道の東側にある「瓜生せせらぎ散歩道」という水路など、乞田川同様に大変身している川もあれば、大谷戸公園のように「これぞ谷戸」という場所もある。
 かつて谷戸だった道を通る車を目で追っていると、「流通」という言葉が浮かんでくる。時代と生活の変化は、流れるものさえ変えてしまうようだ。
 川の上流には、水不足に備え、溜池が造られたところもあった。それらも開発のために田んぼを潰すと不要になり、埋め立てられて公共施設へと変わった(旧南永山小学校・現在の南永山社会教育施設や永山南公園など)。ちなみに永山南公園に建つ鉄塔は、溜池があった頃から同じ場所にあるそうだ。
 ニュータウンで有名な溜池といえば、長池公園(八王子市別所)内の築池だが、実は乞田川にも溜池が残っていたのだ。
 乞田川上流より流れ込む中沢谷戸、多摩市西部の島田療育センター近くにある中沢池公園をご存じだろうか。ニュータウン開発時にもこの辺りは開発を免れ、今も、ほぼ当時のままの静かな佇まいを残している。 
 池は寛文年間(1665年)に造られ、永い間周辺の田を潤した。現在は、多摩市有地の親水公園となって、ハスや花菖蒲、水車などが見られる。
 中沢池では釣りも楽しめる。もちろん「ルアーやリールの使用禁止」「釣針は折り返しのないものを使う」などルールはあるものの、こんな街中に釣り場があったのだ。ちなみに築池は「釣り禁止」です。 090101号掲載

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