- 2004-01-15 (木) 10:47
- 【連載】多摩ニュータウン
一月も十五日を過ぎると正月気分は全く無くなってしまう。十五、十六日の小正月も、成人式の日取りが変わってしまったこともあってすっかり昔の面影は薄らいでしまった。
ある日の夕方「三越」の地下食品売り場を歩いていると…(このところデパートの中を取り立てて買い物もないのにぶらぶら歩いて廻るのは殆ど日課のようになっていたのだが)。
ふと漬物屋さんを見ると昔懐かしい糠のついた田舎風の沢庵の浅漬けとでもいうような美味しそうな漬物が目に入り、急に沢庵漬けが食べたくなったので一本の半分を買って帰る事にした。食べる分だけ糠を洗い、残りは冷蔵庫に入れて置いて下さいと店員さんが教えてくれた。
私の家では、いつも一番寒い所にあたる裏口の「ひさし」の下に重石を幾つも乗せて樽に沢庵の浅漬けを漬け込んでいた。
それを冬の寒いときに出してきては、食事前に何切れもお茶受けとして食べてしまった事を思い出した。「沢庵とみそ汁があればいい」という時代に生まれ育った者としては、久しぶりに自家製のような味を味わう事が出来た。しかしこの沢庵の作り方を知らない家庭も増え、私が抱くような沢庵に対する懐かしさも消えてゆくようだ。
大根は、漬け込む時期を計算して畑に種を播く。「大根引き」という収穫のため畑から抜き取る時期も、ひと霜ぐらい当たったころが甘味が出てきていいという。干し具合といい、塩や糠の加減といい、すべて人の「勘」によって作られる。栽培する畑の土は粘土質ではなく軽いサラサラした土質の方が肌が綺麗でまっすぐな大根ができる。子供を含めて家の者全員で十本から十五本ぐらいを「背負いばしご」で家まで運び井戸で洗う。二本ずつ葉の部分で束ね、吊るし干しする。この作業も年末の家族の大事な行事となっていた。
このような漬物のプロセスを知っていて食べるのと、ただ買ってきて食べるのとでは随分と違った「あじ」になるのでは。私たちは豊かで快適な、しかも便利な生活を追い求めてきた。これでもか、これでもかと便利さを求めすぎて、旬の時期もなんのその、冷凍食品や電子レンジで暖めるだけのインスタント食品が出まわり、冷茶、ウーロン茶、ジュースなど冷蔵庫から取り出すだけで缶のままお客様にも出せる昨今だ。作る手間や調理のプロセスが省略されてしまい出される料理に「有難味」がなくなってきている。作った人の心が伝わってこないからだろう。 040115号掲載
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