今一冊の本が世間の注目を集めている。養老孟司著「バカの壁」である。発行部数も教養書としては珍しく250万部を超え、昨年の流行語大賞にも選ばれている◆新書版の読みやすい内容であり、現代の人々が抱く不安感、閉塞感の根源と、それに対するヒントが示されている◆養老さんは「自分が知りたくないことについて耳を貸さないで、情報を遮断している人間が多い。そこに壁がある(バカの壁)。それが嵩ずると向こう側のこと、自分と違う立場のことは見えなくなる。その先に戦争、テロ、民族間・宗教間の紛争がある」と述べている◆その壁を構築すると物事をみる眼が一元化し、個人では自己中心主義、国家では一国主義に至るのではなかろうか◆本来日本人が住むのは、八百万(やおよろず)の神の精神世界であり、一元論の世界ではない。また全てのものの背景には欲があり、その欲をほどほどにせいというのが仏教である、と著者は解決のヒントを与えてくれる◆同様の主張が「仏教が好き!」(河合隼雄・中沢新一共著)のなかで「仏教の考えていた方法によらないかぎり、国家が作りだす悪は消えない」にも窺える◆仏教の再評価が行われている昨今、更めて周囲の仏教を見直してみたい。(本吉 寿夫)

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