昨年突然、作家山岡淳一郎さんから取材を受けた。そして今春、「マンション崩壊 あなたの街が廃虚になる日」という本が発行された。それは耐震強度偽装事件が昨年10月に発覚する少し前、既に日本の住宅史上最悪、前代未聞の欠陥住宅群の建替え工事が始まっていたことを明らかにするものであった。しかも、それは多摩ニュータウンの八王子市南大沢地区内で分譲した全46棟(919戸)のマンション群である。
86年から92年にかけて分譲されたその46棟は、管理組合の検査がきっかけで鉄筋が設計通りに入っていなかったり壁の厚さが十分でなかったり、といった欠陥が見つかった。20棟は取り壊し建替え、21棟は補修し、5棟は住民との協議中で、その費用の総額は500億円を超す見込みと言われている。50社近くに上ると思われる施行業者に請求するというが、業者の負担はかなり厳しいようだ。結局公団(都市再生機構)の負担となり、気が遠くなるほどの巨額な無駄遣いとなってしまうわけだ。
著者は、なぜこのように手の施しようも無い欠陥住宅になってしまったのかという闇に迫っている。コスト優先で、住む人や地域の安全性を軽視した公団と施行業者の無責任な姿が浮かび上がってくる。
居住者の悲劇は、入居間もなくポチョッ、ポチョッ、ピチャッ、ピチャッ…と深夜部屋のあちこちから絶え間なく聞こえてくる(雨漏りの)音から始まった。単調な音だが脳髄に突き刺さる。妻は…もう気が狂いそう、疲れた、引越したい…と。…35年のローンはどうするのか。事を荒立てたら資産価値に響く。うちだけの問題ではない全戸の価額が暴落するのだ…と。数年にも及ぶ住民の苦しみはマンション群に数え切れないほど存在した。
著者は雨漏りに悩む居住者に対する公団側の対応を批判しているが、この問題をより複雑にしているのが居住者の「資産価値幻想」であるとも指摘している。
施工者自らが不安な街づくりに拍車をかけている。 060601号掲載
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