
上昇気流に乗り大空を舞うグライダー。いま高度600メートル。聞こえるのはただ翼の風を切る音。操縦桿を操作し旋回のペダルを踏む。緊張感の中に遥かな地平線を望んで大学生活に描く学園の詩。
中央大学八王子キャンパスの南西部には広さ約300平方メートル、高さ8メートルに及ぶ鉄筋コンクリート格納庫がある。飛ぶのは埼玉県妻沼滑空場だが学校内に格納庫のあるのは珍しい。機体整備と航空部の拠点だ。
いま部員は20人。3月中旬、3年生の窪田健太郎主将・青山紗千副将と2年生4人の皆さんに聞いた。
航空部は62校加盟の日本学生航空連盟に所属し大学公認の体育会系クラブ。「スポーツや音楽と違って航空部には入学前の経験者がいません。全員初心者のスタートです」「男女の差などありません。ただ体重が100キロを超える人は無理」「基本は自分が教科本で勉強し先輩から教わる。合宿ではミーティングとワンフライト毎に教官の注意を聞きます」。
妻沼滑空場。利根川河川敷を利用したグライダー専用の飛行場で各大学のグライダーを収める格納庫と近くに連盟の合宿棟がある。航空部は連休や休暇期間にここで合宿する。保有機は4機。「前方の滑走路端でウインチ付自動車の巻くワイヤーが機体を曳いて上昇します。全ての無線交信は出発の滑走路端に設けるピットで行います」。
初心者も中大OBの教官が同乗する複座のグライダーで一気に上空を飛ぶ。「空からあんなに周辺が見えるとは思わなかった」「高く飛べば、宇宙飛行士にもなりたい気持ちがして来ます」とは女性部員。“君はなぜ空を飛ぶ?”などの愚問はやめよう。約60回の同乗飛行で、2年生になった頃に単独飛行に移る。空域は半径9キロ範囲。標準高度600メートル。飛行時間平均15分。青山さんには、上昇気流の多い冬、滞空58分の経験があるという。
上空で考え迷うことは許されない。必要なのは現状への集中力だ。窪田主将は言う「頭のいいひねくれ者よりバカでも素直な者が空では優秀です」。青山さんは言う「同じ風は二度と吹きません。一度だけのチャンスを逃さずに上昇気流を捕まえるには勘ではだめです。経験してその日の気象を知れば自分の感覚で分かるようになる」。グライダーは人生の上昇気流を捕えるのと同じに思えた。 2007.4.1号掲載
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