「背くらべ」は作詞・海野厚、作曲・中山晋平で大正12年5月、『子供達の歌』に登場した。
5月5日の出来事。おととしの同じ日、兄が柱につけてくれた背丈の印。昨日計ってもらうと羽織の紐位しか伸びていなかった。
その柱にもたれて山並みを眺めると、遠い山々もまるで背くらべ。最後は「やっぱり富士山は日本一」と、この詞で日本人に富士山のイメージを決定づけた。
当時「カチューシャの唄」などで既に高名な作曲家だった中山晋平に対し、海野はこの作品が出世作となった26歳の俳人。詞は彼の実の弟の視点から描いたもので「兄さん」が海野と思われるが、2年後に彼は肺結核で短い生涯を閉じた。
端午の節句は、奈良時代から続く古い行事。月の端(はじめ)の午(うま)の日という意味で5月に限った事ではなかった。が、季節の変わり目である端午の日に、病気や災厄をさけようと、薬草を入れた湯を浴びたり、菖蒲が「尚武」と音が通じるため、菖蒲を浸した酒を飲んだり、悪鬼を退治する意味で馬から弓を射る儀式が行われた。子どもだけでなく皆が病気にならず健康であることを願う切実な思いが端午の節句の生まれた理由であろう。
自らの成長とそれを期待して待つ長い時間も、現実には羽織の紐のような短いものだった。海野は、この理想と現実の背くらべを思いながら若くして生涯を終えたような気がする。 080501号掲載
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